10月8日②
引き続いて、午後には、タイのチェンマイ大学の表敬訪問を受けました。こちらは大人数での訪問となりました。ポンラック・スリバンディットモンコン学長を筆頭に、チャリン・テチャパン副学長(戦略担当)、ウィニタ・パニョドム副学長(研究担当)、タニャヌパップ・アナンタナ副学長(スタートアップ担当)、ウォラカニャ・ブラナパッタナ学長補佐、ユタナ・フィモンシリポン産業農学(Agro-Industry)学部長の皆さんです。
チェンマイ大学と本学は、2015年の先方の経済学部と本学の国際開発研究科の部局間協定から連携が始まっています。2022年には獣医学部と本学アジアサテライトキャンパス学院(ASCI)が協定締結をし、ASCIのカンボジアサテライトキャンパスにチェンマイ大学のウィタヤ・スリヤサタポーン教授が本学の特任教員として着任をしていただき、キャンパスの管理運営を担ってもらっています。感謝です。
事前に、チェンマイ大学として連携の興味がある分野として、獣医学、バイオサイエンス、学際研究(AI、データサイエンス、ワンヘルス、健康・農学・環境分野を跨いだ連携)、そして経済学の分野での共同コース設定などについて提示がありました。そこで、本学側も、水谷副総長以外に、工学、生命農学、環境学、国際開発の4つの研究科から研究科長または副研究科長の方に同席をお願いしました。さらにカンボジアでの連携もあることから、今回の訪問の話を仲介された江原先生を含めた生命農学の教員数名にも加わっていただき、大人数でのミーティングとなりました。1時間、あっという間でした。
今回のチェンマイ大学の提案は多岐に渡り、大学間の連携協定(MOU)、これまで実績のある物理・天文・化学分野以外でも、スペースサイエンス、マテリアル、食料、さらには環境変動などいくつかの分野での連携の可能性について示されました。私の専門分野である、物理・天文、そして化学では、京都大学を加えた3大学での連携が進められていて来年にはシンポジウムが予定されているとか、知りませんでした。いずれにせよ、チェンマイ大学からは、新たな分野での連携について、オンラインを活用しながらのワークショップからスタートするのはどうか、という現実的な提案もあり、先方のやる気が見えました。
チェンマイ大学ですが、スタートアップにも相当力を入れていて、すでに500社が起業しているとのこと、学生教育でもチームを作って課題の解決をグループワークさせ、そこから起業に持っていくなど、興味深い施策の紹介をいただきました。学生が5カ国のスタートアップ企業を経験するプログラムもあるとのこと、力の入れようにびっくりさせられました。
今後の連携ですが、まずは現場で一つ一つ積み上げながら、複数のチャンネルでの連携が進んできたら、大学間協定に、というプロセスで合意したところです。
チェンマイ大学の皆さんですが、昨日来日されて、京都先端科学大学、京都大学を訪問の後、本学に来てくださいました。この後は岐阜へ移動、朝日大学、そして岐阜大学を訪問するとのことです。岐阜大学には獣医もありますし、航空宇宙生産技術開発センターも訪問されるそうで、マッチングは良さそうです。そのあとは広島で広島大学とサタケという米を中心に食品加工をしている会社を訪問する、というなかなかに過密スケジュールです。
10月8日①
本日は、二つの海外大学の表敬訪問を受けました。
午前中からランチにかけては、トルコ・日本科学技術大学です。ムスタファ・ヴェルシャン・キョク学長、三原和久プロボストのお二人に加えて、ダムラ・ギュミュシュカヤ駐名古屋トルコ総領事もご一緒に訪問くださいました。
このトルコ・日本科学技術大学(TJU)ですが、2013年に安倍晋三首相(当時)とレジェップ・タイップ・エルドアン首相(当時)が署名した戦略的パートナーシップ構築に関する共同宣言に端を発するそうです。2016年には、この大学の設置に関する協定が結ばれています。そこから10年近く経って、ようやく、来年の2月から最初の学生(大学院生)を受け入れるとのことです。ちなみに、大学理事会のメンバーには、野依良治先生も加わっています。
TJUですが、大学の規模としては小さく、カバーする分野を地震災害科学、情報科学・デジタルテクノロジー、エネルギーと環境という3つにまずは限定し、最初は大学院から、そして二年後には学部を開設する予定とのことでした。教員も専任を2名、併任を3名からスタート、2030年までには専任を14名まで増やしていくそうです。
トルコは日本と同様に複数のプレート境界にあり、大きな地震が多いことで知られています。本学に来られたのは、減災連携研究センターを中心に、地震災害科学の分野での連携を目指してのことと理解しました。そのため、今回の表敬訪問は、国際担当の水谷副総長の他に、減災連携研究センターの鷺谷威センター長と長江拓也准教授、また環境学研究科附属地震火山研究センターの渡辺俊樹センター長にも参加いただきました。とにかく大学を立ち上げるのに一生懸命ということで、今回は、STSフォーラムに参加されて日本の大学の学長と面談をされ、さらに大阪大学を訪問、そしてこれから筑波大学、早稲田大学を訪問されるとのことでした。
10月6日
本日は、午後に女性研究者トップリーダー顕彰の授与式と懇談会がありました。
本顕彰は2017年に創設されたもので、優れた研究成果をあげられ、さらに将来本学のリーダーとして活躍が期待される女性研究者を称えるものです。これまで27名の研究者を顕彰してきました。
授与式は、ジェンダー・リサーチ・ライブラリの2階で行われました。今回は、4名の方が顕彰の対象です。
一人目の長崎大学からこの4月に着任された医学系研究科の中沢由華教授は、分子細胞生物学の基礎研究、特に損傷したDNAの修復の分野で高い研究成果をあげられている方です。
二人目の工学研究科の吉田朋子教授は、固体化学・エネルギー変換化学を専門に、X線吸収分光学、人工光合成の分野の第一人者です。吉田さんは、本学の工学研究科やエコトピア科学研究所(未来材料・システム研究所の前身)の助教や助教授をつとめられた後に、大阪市立大学(現在の大阪公立大学)に転出、昨年、本学に戻ってきてくださいました。
三人目の宇宙地球環境研究所の三宅芙沙准教授は、過去の太陽活動を年輪などに残された炭素の同位体を測定することで明らかにする研究のトップランナーです。太陽が爆発現象を起こした結果、炭素の同位体がある年だけ特異的に増加する現象のことを、今では三宅イベントと呼ぶようになっています。三宅さんは、学部からずっと名大の生え抜きになります。
四人目が、デジタル人文社会科学研究推進センター/人文学研究科の川本悠紀子准教授です。川本さんは、古代ローマの文化史を専門としており、現在は古代ローマの庭園などが研究テーマとのこと、本学にYLC助教として着任する前は、ミュンヘン大学やキングズ・カレッジ・ロンドンで学んだ後に、国内外の大学で研究を務めるなど、世界ところ狭しと活躍している研究者です。
キャリアも、研究分野も本当に多様な四人の研究者ですが、まさにダイバーシティを体現してくれています。これからの研究・教育面での活躍、そして名古屋大学でのリーダーとしての活躍を大いに期待しています。彼女らのような研究者にとって名大が居心地の良い場所となって、どんどんと人を惹きつけてもらえればありがたいですね。
授賞式の後は、過去の受賞者や女性評議員、ジェンダーダイバーシティセンターの教員らも交えての懇談会です。和気あいあいとした雰囲気の中でも多くの有益な指摘などをいただき、充実した時間を過ごすことができました。場所は同じジェンダー・リサーチ・ライブラリの1階、カフェブランです。例えば、中沢さんからは長崎大学で実施していた、女子中高生が女性教員から理系の世界を学び、理系への進路選択を支援する施策を紹介いただき、大変参考になりました。川本さんからは、今回の副賞である研究費のおかげで貴重な資料をイタリアで専門家に複写依頼できたという感謝の言葉がありました。複写といっても侮るなかれ、ページ数も多く、普通のコピー機が使えないそうで、結構びっくりするぐらいの金額でした。
10月3日②
夕方6時からは、ホームカミングディのプレ企画として恒例となりましたNU3MTをオンラインで開催しました。
名古屋大学の誇る、学術奨励賞を受賞した学生のうち9名、つまり最も優秀な大学院後期学生である彼ら、彼女らが誰にでもわかるように、本人の最先端の研究について3分にギュッとまとめて語るこの企画、毎回多くの方にご視聴いただいき、ありがとうございます。今回で5回目になります。
今回もみなさん工夫を凝らし、高いレベルの研究を少しでもわかりやすく説明しようと努力をされていて、素晴らしいプレゼンでした。非常に高いレベルの中、視聴者の票を一番集めたのが、生命農学研究科、清日香さんでした。清さん、グランプリおめでとうございます。
また、私が選ぶ総長賞は、工学研究科の梅本駿さん、こちらもおめでとうございます。お二人には、10月18日ホームカミングイ当日に1000人の聴衆の前で、エキジビションに臨んでいただきます。みなさん乞うご期待!
今回は、本当にハイレベルの戦いで、誰が受賞してもおかしくありませんでした。みなさん、本当に素晴らしかった!おめでとう。
また、このNU3MTのもう一つの見どころは、指導教員や研究室からの応援の動画です。今年も、ものすごくぶっ飛んだものがありましたので、ぜひ、アーカイブからご視聴いただければ幸いです。
この企画、担当のDevelopment Officeがポスターや「新聞」作成など、本当に工夫を凝らしてくださっています。そちらも含めて、以下の企画ホームページ、ご覧ください。
https://hcd.adm.nagoya-u.ac.jp/2025/kikaku/event/202506/273/
10月3日①
月曜から水曜日までの間に、4回の挨拶、そのうち3回は英語、そして火曜日には経営協議会、水曜日は役員会、木曜日は運営方針会議と東海国立大学機構の重要会議が立て続けにあり、全てで国際卓越研究大学の申請状況について説明する、またその間非常に密な打ち合わせ、という帰国後すぐにも関わらず非常に忙しい一週間もようやく今日で終わります。
本日は、打ち合わせや来客は何件あったのですが、午後に2つ、重要な件がありました。
まず北京大学の学長一行による表敬訪問です。毎年京都で行っているSTSフォーラム(今年はAIと社会問題がテーマ)に出席する機会に、わざわざ中部国際空港経由で立ち寄ってくださいました。空港から直接来られ、まずは未来材料・システム研究所を見学いただいた後にお会いしました。
場所は、野依記念物質科学研究館の応接室になります。北京大学からは本学の二人のノーベル賞受賞者、野依先生と天野先生が、名誉教授の称号をいただいています。その縁もあり、今回の表敬訪問、野依先生も駆けつけてくださいました。野依先生からは、日中の今後の交流のあり方など、大変格調の高いご挨拶をいただきました。ちなみに野依先生もSTSフォーラムに出席されるそうです。例年であれば、私も出席するところなのですが、今年は10日ほど後に国際卓越研究大学の現地調査があるので、そちらの準備を優先させました。
さて、北京大学からは、ゴン・チーファン(龔旗煌)学長の他に、今回のフォーラムの関係で、数学教育にAIを導入した立役者、北京国際数学研究センターのドン・ビン(董彬)教授、プロボスト・オフィスのスン・フア所長、国際連携オフィスのリー・ユン所長、同オフィスのクイ・チー副所長らがいらっしゃいました。
北京大学は中国で常にNo1を争う大学、名実ともに世界トップランクの大学になります。本学とは、2002年に学術交流協定を大学間で結んでいて、学生交流についての授業料不徴収の取り決めもあります。近年では医学部との交流が中心ですが、文学部の学生1名が昨年から今年にかけて留学をしていた実績もあります。
ゴン学長からは、これまでの医学、物理、化学分野の交流に加えて、北京大学として新たに再編して大きな学部となった工学部での連携もぜひ進めたい、というお話をいただきました。また学生の交流も是非、ということで、授業料不徴収の枠の拡大なども申し出てくださいました。これからもっともっと交流を活発にしていきたいと思っています。
ゴン学長、今回はありがとうございます!
10月1日
いよいよ10月に入りました。だいぶ秋めいてきましたね。
朝方はあいにくの雨でしたが、秋季入学式を執り行いました。留学生中心なので、英語での進行です。入学生総数は291名、うち留学生が236名、41カ国からになります。アフリカから8名、中南米から3名、本当に遠くから、名古屋大学を選んでくださってありがとうございます。
入学式では、卒業式と同様名古屋大学交響楽団のパッヘルベルのカノンによる入場でスタートです。ここでちょっとハプニングが。気になる方は公開されている映像をご覧ください。
私の祝辞の後、壇上役職員の紹介、入学生総代による宣誓とここまではいつも通りです。
その後、今回はゲストとして国際開発研究科のクリスチャン・オチア准教授に先輩としての歓迎の辞をいただきました。コンゴ民主共和国出身のオチアさんが、名古屋大学の研究生、修士課程の学生として、寮での多くの国々からの留学生との出会い、そこで食事を一緒に作る経験などを通じて一生の友人となっていることや、名大の伝統となっている教員からのみならず学生間を含めてのメンターシップの大切さなど、経験に基づいた本当に暖かい歓迎の言葉でした。日本に来て不安に思っている留学生も、勇気づけられたのではないでしょうか。一方で、話の中で紹介されていたオチアさんの研究テーマ、コンゴのような資源が豊富にある国の国民がなぜ大部分貧しいのか、については考えさせられました。オチアさん、素晴らしい歓迎の辞、ありがとうございます。
入学生の皆さん、これからの名古屋大学の経験が実りあるものとなりますように!入学おめでとうございます。